Interview 02
kurikuri
kurikuri × 近藤デザイン事務所
ホームページは、
私の「家」。
「ホームページは、自分の家みたいな存在」と話すkurikuriの楠本さん。創業を機に近藤デザイン事務所と出会い、ホームページやパンフレット、名刺などをともに形にしてきました。二人の対談を通して、デザインに対するそれぞれの考え方や、制作の舞台裏をひもときます。
頭の中にあった言葉が出発点
── 楠本さんがkurikuriを立ち上げられたのは、いつですか。
楠本
開業届を出したのは、2019年です。現在は、お菓子教室のほか、学校で講師を務めたり、お菓子や食品に関するコンサルティングを行ったりしています。
創業前は、お菓子や布小物、お弁当など、テーマごとにブログをつくり、活動を発信していました。創業を機に、徳島でお菓子の先生として仕事をしていきたいと思うようになり、ばらばらだった活動を一つにまとめ、自分の仕事を伝えられるホームページが必要だと感じたんです。
近藤
そのホームページ制作のご相談を、お問い合わせフォームからいただいたのが最初でした。
楠本
デザインに詳しい方から、近藤さんを紹介していただきました。実際にホームページを拝見し、「信頼できるデザインだな」と感じました。
私のお客様は一般の方が中心なので、ホームページも温かい雰囲気にしたかったんです。近藤さんの制作実績には飲食店や食品関係の仕事もあり、「食べ物のことを分かっている方なんだな」と思いました。ここなら、私のような個人の仕事にも親身に寄り添ってくださるかな、と思ったんです。
── 最初の打ち合わせでは、どのようなことを伝えましたか。
楠本
これまでの経歴や、複数に分かれていたブログの内容などを、「これとこれを入れてください」と自分なりに資料にまとめ、持っていきました。フランス菓子の空気感を軸にしたいことや、好きな色なども伝えました。「シンプルで丁寧な暮らしをしたい」という思いも書いた気がします。
近藤
ご自身の考えを、とても丁寧にまとめてくださっていました。具体的な指示ではなく、「何をしたいのか」「どんな自分でありたいのか」が明確に書かれていましたね。
「シンプルで丁寧な暮らしをしたい」という言葉も、デザインを考えるうえで大きな手掛かりになりました。
楠本
デザイナーさんと仕事をするのは初めてでしたが、近藤さんが丁寧に話を聞き、最初にサイトマップ(ホームページの設計図)を送ってくださったんですよね。
私は文字でしか伝えられていなかったのに、それをページごとに整理し、ホームページの構成にしてくださったんです。頭の中が整理されていくような感覚でした。
近藤
何を、誰に、どのような順番で伝えるのかを整理する。それがホームページづくりの土台になります。サイトマップの段階では、まだ写真もデザインもありません。
どのページが必要で、そこからどの情報につながるのか。全体の構成を確認していただいてから、一ページずつデザインに落とし込みました。

「私はパガニーニになる!」と決めた日
楠本
印象に残っているのが、ホームページに使われた「kurikuri」の書体です。当時はロゴがなく、2、3回目のやり取りで、「kurikuri」というロゴタイプが入ったデザイン案が送られてきたんです。
一目見て「なんてエレガントでチャーミングなんだろう!」と思いました。特にKやRの形がきれいで、「これは何という書体ですか」と聞いたら、「パガニーニです」と教えてくださったんです。

近藤
本当は、今後のブランディングも踏まえ、きちんとロゴを作りたいと思っていました。ただ、当初のご依頼にロゴ制作は含まれておらず、予算の範囲もありました。そこで、既製の書体から楠本さんのイメージに合うものを選び、ロゴタイプとして整えました。
書体には国や時代を感じさせるものがあります。楠本さんは、フランス菓子だけでなく、ドイツ由来のマジパンや布小物など、幅広い活動をされていたため、特定の国を強く連想させない方がいいと考えました。また、パガニーニは、「シンプルで丁寧」「上品」という雰囲気にも合っていました。
楠本
この書体を見たとき、「私はパガニーニになる!」と決めました(笑)。ホームページのデザインに、自分を寄せていこうと思ったんです。
当時はさまざまな活動を紹介していたので、一つの国のイメージに寄りすぎない書体にしてくださったのは、今聞いても納得できます。

── 最初に作ったホームページは、その後リニューアルされていますね。
楠本
最初の打ち合わせで、近藤さんが「ホームページは十年も持ちませんよ」というようなことをおっしゃったんです。確かに、自分も年齢を重ねますし、好きな色や仕事の内容も変わっていきます。
私は、ホームページを「家」だと思っています。少しずつ手入れをしながら、実際に住んでいる感覚があるんです。でも、仕事が変わると、ホームページとの間に少しずつズレが出てくるんです。それで、近藤さんがおっしゃっていた通り、「そろそろ家をリフォームしたいな」と思うようになりました。
リニューアルでは、ビジュアルはできるだけ変えず、新しい仕事を追加する一方で、今は行っていないことを削除し、文章も書き換えました。
近藤
ホームページは、技術や閲覧環境の変化への対応が必要です。十年近くたてば、お客様自身も成長し、伝えるべき内容も変わります。仕事や環境の変化に合わせて、見直しながら育てていく方がいいと思っています。
楠本
リニューアル後は、問い合わせをくださるお客様の層が変わりました。県外の就労継続支援事業所からパン屋のコンサルティングについて相談をいただいたり、イチゴ農園からお菓子のプロデュースを依頼されたりしました。以前より仕事の規模が大きくなり、金額も上がったと感じています。

同じ方向を見てくれる伴走者として
── パンフレットや名刺なども依頼されていますね。
楠本
デザインのことは、ほぼ全部、近藤さんにお任せしています。制作物のクオリティにも制作費にも、不満を感じたことは一度もありません。
近藤さんは必ず目的や意図を確認してくださるので、思っていた方向と違うところに進むことがないんです。私の頭の中にあるイメージを整理し、設計して、形にしてくださる。それも、いつも私の想像を超えるものを提案してくださいます。
近藤
僕はもともと食べることが好きで、いろいろなお店の商品を見たり、味わったりします。楠本さんのお菓子には、きちんと楠本さんらしさがあります。上品で、サイズ感も味も丁寧。「シンプルで丁寧な暮らしをしたい」という思いが、お菓子にも表れています。
パンフレットを作ったときには、「もう少しきちんと収入につながる仕事をつくりたい」と話されていました。ただ、商品を大量に売るのではなく、積み重ねてきた知識や経験を生かし、コンサルティングの仕事につなげようとされていました。
楠本
今は、大きく分けて4つの仕事があります。お菓子の仕事、キャリアコンサルタント、食品関係の支援、農家さんへの伴走型支援です。
農産物の六次産業化に関するパンフレットを近藤さんに形にしていただき、「私はこういう仕事ができます」と外に示せるようになったことが、今の仕事につながっています。自分の中に経験や思いがあっても、形になっていなければ相手には伝わりません。パンフレットが、自分の仕事を説明し、次の仕事を連れてきてくれるようになりました。

ホームページに「住む」ということ
── ホームページの運用に、こだわりはありますか?
楠本
初めて会う方から、「ホームページのイメージ通りですね」とよく言われます(笑)。私は本当に、近藤さんにつくっていただいたホームページを、自分の家だと思って住んでいますから。
名刺入れも手帳も、「この家に住んでいる人が持つアイテム」というイメージを大切にして選んでいます。ホームページを訪れてくださる方にも、家にお客様を迎えるような気持ちで接したい。だから、ブログの言葉遣いや、掲載する写真にも気を配っています。
自分だけが心地よければいいのではなく、訪ねてきてくださった方にも、気持ちよく過ごしてもらえる場所にしたいんです。
近藤
一緒に作ったものをここまで丁寧に使っていただけるのは、本当にうれしいです。夢や希望をのせたデザインを大切に守りながら、ご自身のブランドとして育ててくださっていると感じます。
それができるのは、楠本さんの中に「こういうものがいい」「こうありたい」という理想があり、それをきちんと言葉にして伝えてくださるからです。僕の仕事は、その言葉を聞き取り、整理し、相手に伝わる形へと設計することだと思っています。
これからも、楠本さんらしい世界観を一緒に育て、その仕事がさらに広がっていくお手伝いができればと思っています。
── 本日はありがとうございました。